広報誌同友にいがた
2025年6月号

新潟県中小企業家同友会
広報誌 DO YOU KNOW?にいがた 6月号 Vol.445
2025年6月号
新潟県中小企業家同友会
広報誌 DO YOU KNOW?にいがた 6月号 Vol.445
■表紙
歴史と共に歴史をつくる
【木村建設(株) 代表取締役】
木村 地与仁 氏 下越南支部
■Contents
◇PEOPLE LIFE data No.058
未来を創る! 新潟の企業家たち
木村建設の存在意義
木村 地与仁さん 木村建設(株) 代表取締役
◇2025年度 一般社団法人 新潟県中小企業家同友会 理事・監事メンバー
◇一般社団法人新潟県中小企業家同友会 会歴表彰特集!
◇私とお話しませんか?会員交流の館 支部長のバトン vol.21
◇ANOTHER REPORT
例会や行事の報告など、
情報共有の場としてフリーテーマで同友会の情報を発信します。
新入局事務局員紹介
- PEOPLE LIFE data
- 理事・幹事メンバー
- 会歴表彰特集
- 会員交流の館
- ANOTHER REPORT
歴史と今自身にできること
私たちの会社は、明治から続く長い歴史を持ち、五代にわたって事業を承継してきました。その歩みの中では、社会情勢の変化や技術革新、時代ごとの価値観の移り変わりなど、幾多の波を乗り越えてきました。会社のルーツや転機、そして代々受け継がれてきた想いを知ることで、自分の仕事の位置づけや、会社で働く意義が自然と見えてきます。
とはいえ、実は私自身はもともと経営者になるつもりはありませんでした。公認会計士を目指して進学・勉強を続け、財政面で関わり、結婚相手に経営を担ってほしいと考えていました。経理事務所に在籍中、木村建設で宅建の資格を持つ社員さんが退職することとなり、免許を持っていた私が一時的に入社することになりました。その折、父の病気が発覚。存命のうちにと建築士の資格を取り、「建築を知るために修行しなければ」と反対を押し切り一度木村建設を退社、ゼネコンと設計事務所で経験を積みました。今思えば、経営者となる覚悟はこの時にできたのだと思います。その後平成10年に父が急逝し、現在に至ります。
建築の世界には古くからの慣習や独特の価値観が色濃く残っており、劣悪な作業環境と女性が関わることへの偏見もありましたが、その反面、女性だから気づくことがたくさんあり、重宝してくれたり提案を楽しく受け入れてくれることもあり、「建設業・不動産業は女性の職場になり得る!」と確信しました。小さいころから「ダーティーで暗く怖い・お客様にとっては敷居が高い」というイメージがあり、「自分だからこそできることがあるのではないか」と自身の役割と目的を再認識しました。
次代に繋ぐ
会社では、「まずは現場を知ること」を大切にしました。最初に携わったのは、公共工事の現場でした。書類作成や工程管理、安全管理など、業務は多岐にわたります。建設の現場は日々動き、予期せぬ出来事の連続。体力も神経も使う現場での経験は、今振り返っても自分にとって大きな糧となりました。設計事務所では図面を描き、空間を考え、施主の想いを形にするプロセスに触れたことで、「建築の原点」とも言える部分を肌で感じることができました。
現場管理、営業、設計と、立場を変えて仕事に向き合ってきたことで、建築業の全体像を少しずつつかんでいきました。長時間労働や属人的な業務体制など、「このままで本当に良いのか」との違和感もあり、今の経営スタイルや職場づくりにおける課題意識の原点となっています。
ある時から、自分の意見を押し通すのではなく、「一歩引いて、まずは聴く」姿勢へと切り替えました。若い社員の声を拾い、少しずつ周囲に巻き込みながら、社内に新しい視点を取り入れていく。その姿勢が、徐々に社内の空気を変えるきっかけとなり、今では世代を超えて意見を交わせる環境が育ちつつあります。
何のための仕事か
2021年に経営理念指針書を社員と共につくり直し、「食部門」を新設しました。「食でつなぐ」という理念となった時、私のバイブルである“※1建築基準法第一条”と繋がり、『建築も食も目的は一緒』だと気づきました。
そして10年ビジョンの一事業、惣菜屋「mok mog(モックモグ)」を2025年5月からスタートしました。木村建設の木である「もく」と食べる音である「もぐ」から名付け、ロゴには地元五泉に関わるモチーフをちりばめました。
地域環境を考慮し、モバイルオーダーやデリバリーにも対応しました。あったかいおかずが手間なく食べられる、五泉市の家族の環境づくりを目指します。
※1 建築基準法第一条(目的)この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。
木村建設(株)
代表取締役 : 木村 地与仁 氏(下越南支部)
事業内容 : 総合建設業、不動産業、一級建築士事務所、損害保険代理店、相続・資産整理コンサルタント
住所 : 五泉市五泉1485-1
TEL : 0250-42-2690
創業 : 1887年
従業員数 : 10名
しばらく例会にも出れず、幽霊会員になっている中こういったことをしていただいてうれしいです。入会時の例会報告は知らない会社の成功話ばかり。私はつまらなく感じ、しばらくして1度目の幽霊会員になりました。
転機は退会をすると決めて参加した最後の例会が、河野通洋さん(岩手同友会 ㈱八木澤商店 代表取締役)の報告者でした。確かに凄いと思える報告でした。でもそこで聞こえてきた年下の報告者に「流石」とか「先生」と呼ぶ声に、「いや違うだろう」と感じ、青年部の2次会の席で「近く見返して見せます」と直接伝え、負けないと決意しました(河野さんは覚えていないと思うけど…)。
その後、東日本大震災が発生。新潟から物資を運び入れる相談を澤で行い、新潟から現地へ向かった方からの情報で、地域の先頭に立って動いている河野さん達同友会会員の話を聞きました。「自社も津波で流されてしまっているのにすごい!!この人」と思い更に河野さんと同友会に興味津々。私は同時期から広報情報化委員会に参加します。文章校正が苦手で表紙の写真ばかり携わってた私が少し文章を書き、広報誌づくりに関わったおかげで、自社の広報チラシも作れるようになりました。持論が強く、人に言われたくらいで意見を変えない私が、初めて「経営者として更なるハードルを感じた」と思ったのは、関原さん(㈲京美容室 上越支部 同じく20年表彰)です。上越で報告の機会をいただいた際に、飲食業界の労働環境の部分について質問を受け、経営者として何も考えていなく、同じく業界的にブラックな職種な部分を真正面から改善している関原さんにキッカケを頂きました。会社は飲食店だけでは今後つぶれると思い、フランチャイズのお弁当事業を始め、人手不足から障害者雇用をしようと、自社で就労継続支援A型事業をスタートしました。お弁当製造や、くろとり食堂の運営に関わる難しい仕事ばかりですが、専門家の皆さんが「こんなに組織的で技術の高い事業所はない」と言ってくれるほど、みんな頑張ってくれています。福祉知識がないからこそ、一人ひとりと向き合うことができ、どんな風に生きたいのか、どんな仕事がしたいのかと語り合えるので、自分の目的に向かいプロとして仕事をしているのだと思います。事業全体の売上比率でも、A型事業の関わるくろとり食堂がかなり大きい割合となりました。
同友会で学んだことは、大きく2つです。1つは良くしてくれる仲間やかわいがってくれる先輩との繋がりの大切さ。もう1つは人が成長していく姿から学ぶことがある。ということです。その人たちのおかげで、20年続けることができました。あまり例会では会えないと思いますが、会った時はよろしくお願いします。
Q.お二人の入会のきっかけや、「新発田支部」に感じていること、想いなどを教えてください。
渡辺:2012年頃、代替わりをして経営者になってすぐ位に、取引先の会社の社長さんから同友会を紹介されました。正直、経営者の会とかに行きたい気持ちはなくて、やりたくなかった。ただ、当時決めていたのが「やりたくないことをしよう」ということで、仕方なく入会しました(笑)。翌年には経営指針を作る会(現経営指針成文化と実践の会)を勧められ、本当にやりたくなかったんですが、受講することにしました。私は“やる”と決めないとバットを振れない人間なんです。草野球も打席に入ったら絶対初球は振るようにしています。
新井田:でも、決めたことは絶対にやりますよね。「残業をやめる」って決めて赤字が続いてもあきらめずに、工夫して黒字に変えたって話はすごいと思いました。
渡辺:当時は薄利多売の中で、残業をやめて多売を取ってしまったので、そりゃ赤字になるよね、という状況でした。残業がなくても、会社が赤字だと社員さんも不安になって退職する方もいました。社内の数字への意識を変えて、月次決算時に黒字であれば残業がなくともみなし残業代を支給する制度を導入すると、社員全員が利益を考えながら仕事をしてくれるようになり、経営状態は上向いてきました。
新井田:色々見学させてもらったり、お話を聞いて勉強させてもらっています。私は、経営指針を作りたいと思っていた時、別会で「それなら同友会がいいよ」と紹介され入会しました。なので、支部活動を求めていたわけではないというのが本音でした。ただ、例会に出れば話しやすくて、互いを応援し合えるところが魅力的な支部だなと思いました。
渡辺:コロナ禍では、飲食店のサポートができればと、懇親会の代わりに会員店舗のオードブルを届ける「ブラックボックス」を企画したり、何か新事業を始めれば会社に行って見学したり、支部歌ができたり(笑)。
新井田:内向的すぎる部分もあるので、今後は外部発信ができるようにしていきたいです。そういう意味で、今進めている2025年経営フォーラムの下越ブロック開催は、いいきっかけになると思っています。村上支部・下越南支部と協力して、盛り上げていきたいです。人間として、企業としての目的を語り合える集まりっていうのは、私が知る限りは同友会しかありません。自分が何者なのか、とか、何のために経営をするのかを当たり前に話し合える場はすごく貴重だと思います。そういう場に行きたくなる、相談しに行きたくなる、価値ある例会づくり・支部づくりをしていきたいと思います。みんなが価値を感じる。一つになれる支部を目指します。
渡辺:言っちゃったね(笑)。
新井田:本当に(笑)。言ったからにはやらないとね(笑)。
4月より新潟同友会事務局に、髙橋岬さんが加わりました。
入局後、まずは同友会の企業を知ってもらおうと、2025年度正副代表理事5社の企業訪問を行いました。
髙橋岬さんの自己紹介と共に、訪問の感想をご紹介いたします。
4月1日より事務局に加わりました、髙橋岬と申します。生まれも育ちも、そして学びもすべて新潟県内という、生粋の新潟県人です。これまで生命保険・損害保険の営業や税理士事務所での事務を経験し、人と関わることの楽しさを実感してきました。
これから事務局員として新潟のことをもっと知り、皆さんと一緒に学んでいけたら嬉しいです。気軽にお声がけください!
今回、正副代表理事の皆さんの企業を訪問させていただきましたが、どの方からも「人を大切にする」という姿勢が一貫して伝わってきました。
㈱テクノナガイソラーレの長井さんは、「仕事を楽しんでほしい」という想いを大切にされ、「みんなでよくなる」という価値観のもと、社員一人ひとりの成長を後押しする空気をつくられており、経営と人の関係の近さを感じました。
㈱吉田工業の吉田さんは、「会社の土台は従業員」と明言され、学歴よりも人柄を重視した採用をされています。たとえ赤字でも挑戦を応援し、社員の可能性を信じて見守る姿勢に、器の大きさと温かさを感じました。
㈱Re-sizeの野口さんは、「社員の幸せが自分の幸せ」と話され、等身大で社員と向き合いながら、共に作り上げた方針を冊子にして共有されていました。考え方を形にして伝える姿勢に、誠実な姿勢が垣間見えました。
㈲新潟ワークステーションの諸橋さんは、女性やパート社員にも安心して働いてもらえるよう、制度や安全に配慮されていました。また、パート社員と正社員の垣根をなくしたいと、誰にとっても居心地のよい職場を目指す姿に温かさを感じました。
㈱給材の宮崎さんは、子ども食堂にも取り組まれていて、その部分では「多少の損をしてでも人の役に立つ」という想いのもと、地域との関わりを大切にされながら、従業員の働きがいや誇りにも心を配られていました。表からは見えにくい部分にも気を配る姿に、経営者としての誠実さを感じました。
これまで私は中小企業には少なからず「余裕がない」というイメージを持っていましたが、訪問した企業はそれぞれ人を真ん中に据えた前向きな力に満ちており、その印象は大きく変わりました。今回の企業見学により、同友会の理念の1つである「よい会社・よい経営者・よい経営環境をめざす」とは、まず従業員の視点を大切にすることから始まるのだと実感しました。働く人が誇りを持てる会社こそが、社会にとって「よい会社」になるのだと思います。
今回感じたことをもっとお伝えしたいのですが、文字数の関係でごく一部しかご紹介できず、心苦しく感じています。それでも、社長である理事の皆さんの想いや人に向き合う姿勢に触れられたことは、大きな学びとなりました。代表理事の皆さん、貴重な機会を本当にありがとうございました。
一般社団法人新潟県中小企業家同友会 事務局 髙橋 岬 記